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内容説明
1902(明治35)年1月、雪中訓練のため、青森の屯営を出発した歩兵第5連隊は、
八甲田山中で遭難、将兵199名を失うという、歴史上未曾有の山岳遭難事故を引き起こした。
当時の日本陸軍は、大臣報告、顛末書などで、猛烈な寒波と猛吹雪による不慮の事故として葬り去ろうとした。
しかし、その事故から62年後、最後の生き証人だった小原元伍長が長いインタビューを受けて証言、
地元記者が「吹雪の惨劇」として発表し、真実の一端が明らかにされた。
その情報を元にして新田次郎は『八甲田山死の彷徨』を執筆、書籍は大ベストセラーに、映画『八甲田山』も大ヒットした。
著者は、小原元伍長の録音を入手し、新田小説とのあまりの乖離に驚き、調査を始める。
神成大尉の準備不足と指導力の欠如、山口少佐の独断専行と拳銃自殺の謎、福島大尉のたかりの構造、
そして遭難事故を矮小化しようとした津川中佐の報告など疑問点はふくらむばかりで、さらに生存者の証言、
当時の新聞、関連書籍や資料をもとに、現場にも足を運び事実の解明に努めようと試みる。
新発見の事実をひとつひとつ積み上げながら、「八甲田山雪中行軍」とは何だったのか、その真相に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
65
氷点下の雪山へ行くというのに、足袋の上にわら沓をはくだけ。ありえないほどの軽装備。目的地への道をだれも知らない。地図も持っていない。リサーチも不十分。映画(未見です)とはイメージも違って、計画通りに行っても遭難するだろうと、冬山の素人でも思う。おそろしいのは上層部が、報告書で都合の悪い点はすべてウソを書いていること。現場の人間に責任を負わせるやり方は、日本の「組織」にずっと今でも続いているのだから、やりきれない。1世紀以上昔の隠された真実を明らかにする著者の文章は、まさに何度も読み返したい価値がある。2021/11/15
ヒデキ
44
「八甲田山事件」のイメージが、覆る一冊でした。 映画や小説では、感動を描くドラマになっていたのを資料から、たんたんと見ていきます 一部の方の虚栄心から起きた惨事であって その隠ぺいされた部分も資料の矛盾から探していきます。 自衛隊員だった著者の方が描いているので 組織としての軍隊では、こういった幹部の行動ってあるのかな?と思って読んでいました。 2021/10/31
さきん
28
ライバル意識というのは、良い方向に働くときとひたすら悪く働くときがあるんだなと感じた。岩手側の雪少ない出身者が多く、隊長クラスは士族2世で能力主義に則っているとは言い難く、事前調査も雪が少ない中で行われと悪い予兆が重なっていった。日露戦争時に装備の改善という意味でこの事件は多少報われたが、当時の上官への処罰が甘いという構造はそのまま太平洋戦争へつながっていく。2022/09/10
Satoshi
13
新田次郎の「八甲田山死の彷徨」は少年時代に読み、大学生になり、映画「八甲田山」を見た。双方とも大好きな作品であり、映画は複数回見ている。本作は八甲田山の雪中訓練経験者である元自衛隊員が生存者の証言等を根拠に検証している。映画のような物語性は無いが、これが真相なんだろうなと思いながら読み進めた。準備不足、過大評価された隊長、天皇上奏と虚偽の意味付けをされた訓練、上官への甘い処分など日本陸軍の問題点が溢れている。犠牲者達は戦死ではないとのことで靖国神社に奉納されなかった。解説は映画評論家の春日太一さん。2023/06/06
くらーく
5
小説は小説、映画は映画。どちらも素晴らしい作品でしたなあ。特に映画は夏に見るとたまりませんな。高倉健のカッコいい事。 それで、本書は資料に基づくノンフィクション。ドキュメントですかね。これが史実なのでしょうかね。だとしたら、ひどい話だなあ。農民も兵隊も浮かばれないね。 立見師団長は、戦上手だったけど、こんな事もあったんだ。まあ、目が届かないところではあるのだろうけど。 陸軍組織の悪い所が顕著にでた事件だったのだなあ。権威を笠に着て、上には諂い、責任をきちんと取らせない。敗戦の道でしたね。。。2021/12/24
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