内容説明
因縁のある旅人と8年ぶりに再会した料理人、飢餓に苦しむ国を救った謎の商人、不思議なナイフで自らの“影”を切り離した男――並行して語られる3人の話が終盤でひとつになり、驚愕の真相が浮かび上がる第七回ミステリーズ!新人賞佳作「商人の空誓文」。どんな賭けにも負けない力を得た少女をめぐる表題作。その他、あらゆる傷を跡形なく消し去る名医の秘密を暴く「対岸の火事」など全5編を収録。“この世の理(ことわり)に背く力”と契約した者たちが起こす事件や陰謀に、人間が知恵と推理で立ち向かう! 架空の異国を舞台に贈る、傑作連作ミステリ。/【目次】「商人の空誓文」3つのエピソードに隠された真相とは?/「あれは子どものための歌」どんな賭けにも負けない力を得た少女の運命は?/「対岸の火事」あらゆる傷を跡形なく消し去る名医の治療法とは?/「ふたたび、初めての恋」宿屋を訪れた男女が抱える秘密とは?/「諸刃の剣」国同士の開戦を止める方法とは何か?/あとがき/解説=宇田川拓也
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
高久
3
すっごくおもしろかった…!表現が難しいんですけど、、ファンタジーの物語と推理小説の両立のしかたが、たぶんいままで読んだどの本よりも巧みだと思う。同じような挑戦をしてる作品は多いんですけど、おおむねミステリかファンタジーのどちらかに比重が偏りがちで、ファンタジー小説としての物語の部分も推理小説としてのロジックの部分も偏りなく面白い。すごいな。きちんとみんなの努力や足跡に報いる大団円なのもすばらしいです。ワジの性格の悪さ大好き2025/05/08
鳩羽
2
飢饉の危機が迫る国に訪れた商人は、売り物が売れないために物語りを始めた。その語り口上は評判を呼び、やがて国王の相談に乗るまでになる。商人は痩せた土地でも育つじゃがいものを見せ飢饉に備える方法を提案するが…。架空の世界を舞台にした連作短編集だが、ファンタジーというより特殊設定ミステリという方が近い。裏の裏があり、別のストーリーの線が連綿とあり、いろんな思惑があり、と謎が解ける爽快感への予感をあちこちに散りばめてあって、楽しめた。寓話というほど単純化はされていないが、小説というほど書き込まれてもないかな。2025/05/17
羽田
2
連作ミステリでもあり、読むたびに「前の話のあれってここと繋がるのか!」と発見があってちらちら読み返してしまう。ファンタジーとミステリの根が共通していることをあらためて思い出した。不可思議な状況への説明が「魔法」でも「トリック」でも、そこに何らかの解答を求めて納得したいってのは同じだよね。作家さんの他の作品が読みたくて検索してしまったんだけど、現状この作品集しかない…?探し方良くないのかな。もしそうなら残念すぎる2025/05/02
RST
1
まずミステリとファンタジー要素のある連作短編集という時点で好きなものの集積。「対岸の火事」が特によかった。悪役にも悪の面だけではないという多面的な描写が好ましい。2025/04/18