内容説明
ヴィクトリア朝大英帝国の巨大情報網の核となった電信事業。それを担う一員である電信士ローラ・テンパートンは、仕事と家庭を持つという夢の間で悩む日々を送っていた。ある晩、彼女は電信局を訪れた局長アクトンの甥ネイト・ホーキンスを案内するが、アクトンは密室と化した局長室で死体となって発見された。容疑者と目されたネイトの無実を確信したローラは、自らの職能を活かして調査に乗り出す。翌日、警察署には謎めいた電報が届くが、そこには被害者アクトンともう一つ別の名が記されており……。本格ミステリならではの趣向を随所に凝らした第三十三回鮎川哲也賞受賞第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
45
まだ馬車が走っている時代のイギリス。主人公は結婚か仕事かと悩む年頃の電信士のローラ。彼女の職場で密室殺人が起こり事件の容疑者に一目惚れしたローラは真犯人を探す為調査に乗り出すミステリ。日本人作家が描いているのを忘れてしまう程にイギリスミステリで驚く。調べているうちに事件関係者の秘密が明らかになるのもポアロ物の様で私好みだ。真犯人はかなり最初の方で解ってしまったのだが詰めの甘いミステリファンの私なので密室トリックの謎は解らずラストの謎解きは楽しめた。伏線を伏線と気付かせない描き方も好みだ。次回作も楽しみ。2025/03/04
ほたる
12
密室毒殺の謎はよくあるものだが、それを電報と絡めて物語を進めていくのが新鮮で面白かった。どうやったのかというトリックも考えさせられたし、事件を追うローラ自身の考え方と気持ちの変化にも惹き込まれた。恋愛要素もあり物語として面白いなと思いながら一気読み。2025/05/31
三編 柚菜
9
お、お、面白い…と打ち震えた今年注目されるべき傑作。密室殺人や『電報予告殺人事件』の題、誰もが怪しく見えてしまう翻弄がことごとく刺さる本格ミステリ。『電信士』という職業を無駄なく用いたお仕事小説。そして『女性電信士』であるローラの、“時代の理不尽”に対する毅然とした強さやラブロマンスでみせる弱さが堪能できるヒューマンドラマ。この三つの要素によって、クラシカルな海外ミステリを彷彿とさせる。全体的に起伏のある展開で、ずっと目を離すことができなかった。デビュー二作目にしてこの構成力に脱帽だ✉️2025/04/20
葉月
2
産業革命期のイギリスで通信士をしている女性が奮闘するミステリ。序盤の登場人物紹介がやたら説明的でぎこちなく(これは前作でもそうだった)、どうなることかと思ったが、電報や街並みといった18世紀イギリス風俗の描写が良くて結構楽しめた。ミステリとしても密室殺人の解決はありがちなものだが、詐欺事件と殺人の関係の持たせ方や、電報を用いたアリバイトリックあたりはよくできている。キャラやプロットも含めて、総じて好感の持てる作品だった。2025/05/31
四季折々
1
「19世紀英国で女性電信士が密室殺人の真相を追う」 馴染みの無い世界観でしたが、魅力的な主人公、作者さんの確かな筆力のおかげで楽しく読めました。この世界観ならではの真相に驚愕。 個人的には196P~198Pのワンシーンがお気に入り。2025/06/04
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